さいきん、店を辞めてから
昼のあいだすいぶん時間があって
その時間、わりに娘の母とでかけることが
多くなった。
出かけるときはほぼ車である。
ヤマダ電機に行ったり、バーミヤンに行ったり。
で、おのず会話も増えるわけで、
「高速道路の渋滞したときさ、
電光掲示板に『ここらから渋滞〇〇キロ
何十分、なんてあるだろ」と
わたしが言うと、
「うん、あるね」
「でも、それ頭来るよな」
「なんで」
「だって、それまでも渋滞してんだぞ、
なのに、なんで『ここから』なんだよ。
じゃ、いままでの渋滞はなんだったんだ。
のろのろ運転して『ここから』って言われたら、
いままでの苦労が報われないじゃん」
「あ、なるほどね」
「だから、一字いれるんだよ」
「なんて」
「『の』だよ」
「え」
「だから、『ここらからの渋滞 〇〇キロ』って
言ってくれれば納得するじゃん」
「ああ、なるほどね」
「電車でもそうだよ、むかし
『黄色い線の内側に』なんて放送あったろ」
「うん」
「でも、あれ線じゃなくて面だよな。
四角いから。それに黄色い線の内側って
言ったら、その黄色の中にいなきゃいけないみたいじゃん。
バレリーナのつま先立ちみたいにさ」
と私が言ったら、妻は言下にこう答えた。
「めんどくさ」