「小市民」という言葉はすでに死語と
なってしまったのだろうか。
しかし、「小さなニンゲン」っていうひとはいる。
わたしも御多分に洩れずそれである。
田園都市線の夕方の下りは
ひどく混む。が、ある年老いた女性が
じぶんのとなりに紙袋をちょこんと置いて、
座れなくしている。
ひとりだけのシートを
保ちたいのか、しかし、公共の場での
そのふるまいは許せない。
そもそも、座れないじゃないか。
だから、わたしは「座れないじゃないか」と
小声で言った。が、そのむこうにひとつだけ
座席が空いていたので、その場をあとにしたが
あのババぁはあのあとどうしたのか、見ていない。
むかつく。
また、電車内で脚を組む輩もおおい。
そのたんびにわたしは、すこしつま先に
あたるように降りたりするのだ。
むかつくよな。
背中に背負っている鞄が邪魔である。
もちろん、電車内。
そういうやつが二人背を向かい合わせに立っていると
そこを通り抜けるのにじゃまである。
で、わたしはそのときかならず
「じゃまだよ」って声をかけるのだ。
ちいさい。
電車を待っているホームドアの先頭の女性。
一メートルくらい黄色い線から離れて
携帯などをみている。
一メートルもあいているのだから、
その間に入ってもいいのかもしれない、が、
並んでいるんです、なんて言われたら
そうですか、すみません、なんてこっちが
言わなくてはなならなくなる。
また、そんなひとにかぎって、
電車に乗るときにゆっくりなのだ。
だから、そのあとに並んでいるわたしなど
また、ゆっくり車内にはいることになり、
気が付くと席がひとつもない。
頼むから急いで乗ってください。
今日、税金を払いに郵便局にいく。
三枚つづりの納付書である。
郵便局に提出すると、職員の女性が
「こんどから、切らずに持ってきてください」
という。
「はい? これもらったままなんですけど」
と、職員は黙ったままである。
「では、税理士さんにこれから
切らずにもってきて、と頼んだほうがいいんですか」
と聞き返すと「いえ、このままでいいです」と答えて、
どうかんがえても憮然とした態度だった。
だから、帰宅してて税理士の先生に
電話した。
「先生、あの納付書、切らずに持って来いって
いわれましたけれど」
「あぁ、そうですか、いや、窓口で
切ってもってきてくださいって言われるところが
多いから、わざわざカッターで切っているんです。
そういう金融機関がおおいですから」との答え。
なんだよ、どっちが正しいのだ。
「じゃ、わかりました。こんど、
そういわれたら、金融機関から切るように
指示がでていますって答えます」と
先生にはもうしあげた。
これがやや溜飲が下がる気がしたが、
いやぁ、じぶんでなんと小さなニンゲンなのだと、
むしろ関心するのである。