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店舗案内

歌人は頭がおかしい

 わたしの知っている歌人の

ことごくはじつに変わっている。

 

 じぶんのことで精いっぱいといえば

言葉を選びすぎている誉め言葉になる。

 

 すこし世話になったからと

手土産でももっていけば、

ありがとうでもなく、

そそくさと手荷物にしまいこむ。

 

 あら、すみませんね、の一言くらい

言えよ、といいたくなる。

 

 会議があるからといって

人数分のケーキでも買っていこうものなら

そこの代表は、さっさと冷蔵庫にしまって

お持たせですって出すこともない。

 

また、代表だからと昼飯をごちそうになると、

その話をエンエン話題にして、いろいろなところで

吹聴する。だから、めったにおごってもらうことは

しないことにした。というより、二度してもらわないことに

決めた。

 

もっとも困り者の老人がいて、

歌会の幹事であったわたしが

みなさんの原稿を集めるかかりであったが、

なんで夜中の3時過ぎにファックスが届くのか。

 

 そのころ、まだ父も病気がちで

寝ていたので、夜中の電話となると

家族はびくっとして起き上がるのだ。

 

 で、電話に出たら、ヒュールルル・ヒュー。

ファックスではないか。と、ズ・ズ・ズ・と

一首の歌が送られてきた。

大芝貫と名前もあった。

 

 妻も起きてきて「どうしたの!」と慌てている。

ファックスだよ、ファックス。

「えー、なんなのこんな夜中に、なにかとおもったわよ」

そりょそうだよ、おれだった、なにかとおもったさ。

 

で、また床にはいるとそれから15分くらいして

また家の電話が鳴る。

 

おいおい。それで電話を取る。

 

「大芝ですけれど、ファックス届きましたか」と。

 

大芝さんは、わたしより歌歴はすくないものの、

人生の先輩だから、はい、たしかに、とあいさつはしたが、

ほんと、やめてほしい。

 

そこで、大芝さんの所属する代表に

わたしは懇願した。

 

「あの、朝方の3時にファックスがとどくんで

なんとかやめてもらえないように頼んでください」

 

代表は、わかったと言ってくれたが、

ほんとうに伝わったかどうか。

 

で、それから、大芝さんのファックスは

朝の5時に届くようになった。