はじめて元住吉という街に降り立った。
ながい商店街があり、さまざまな店がたちならぶ。
もちろん、ケンタもありマックもありと
グロバリゼーションの波はここにもあった。
が、この街にしかないような店も点在し、
ここはすみやすい空間ではないかと
肌が感じたのだ。
イーフートウァンの「空間から場所へ」ではないが、
スペースからプレイスになるところに、
その街のクオリアが立ち上がることを
歩きながら、なんとなく味わった。
今日のお目当ては、「さかなの台所 オリエンタル」での
食事会である。日曜日の夕方、4時。
すでに、店の前には数人のお客が並んでいる。
やはり人気店なのだろう。
新鮮な魚を提供する店ということで
食べログも3.51と高得点。
わたしは同い年の同じ誕生日の
宮川さんと開店の時間を待ち、店内に。
と、日曜日限定の一皿300円という
刺身が、数十種類メニューにある。このご時世、
こんなに廉価な商品があるのかと
すこし吃驚したが、頼んでみると、しめ鯖は
新鮮であるが、その他の刺身は、
けっしてまずくない、が、高級とは
すこしちがったようだ。が、一般的には「うまい」と
言うような皿であった。
わたしどもは、夏には
かならず鳴門の「びんび屋」に行って
刺身を食べるのだが、あそこの新鮮さを
知っているだけに、どうしても比較してしまう。
刺身はねっとりがうまいんだよ、
というひとには「さかなの台所 オリエンタル」は
もっともよい店のひとつになるだろう。
わたしども二人は、
店を後にしたあと元住吉の街をあるき、
宮川さんは、いろいろな店を紹介してくれ
その街にしかないだろう魚屋さんに
行き、わたしはまぐろの柵を買った。
グローバル化と文化の多様性という概念は
対立的で、その街にしかない風情こそ
知らない街のだいご味というものだ。
さかなの台所 オリエンタル、しかり、
その魚屋さんしかり。
ひさしぶり、知らない街のかおりを
わたしは嗅ぐことができたのだ。