Menu

当店は閉店しました

店舗案内

不安はなぜ起こるか

大阪大学霊長類研究所に

アイちゃんというチンパンジーは

たった0.2秒で10桁の数字を認識してしまうという。

 

これは、動物に与えられた本能というもので、

瞬時に状況を察知しなければ

命にかかわるからである。

 

ニンゲンにそんな能力はない。

アイちゃんとニンゲンの違いは、

アイちゃんは瞬時に生きているが未来を

かんがえない。

ニンゲンは瞬時の判断は弱いが

未来、将来をかんがえることができる。

 

だから、未来をかんがえてしまうから

そこに悩みがおきたり不安がつのったりするのだ。

 

ま、たしかに不安はニンゲン特有の

才能だとはおもうが、それが

あまりいい方向にゆかないこともある。

 

公園など、いまは危険だから遊具ははずされ

危険だからとボール遊びは禁止、

危険だからと花火は禁止され、

大声をあげるな、そしてだれもいなくなる。

 

最後に残ったのが砂場である。が、

その砂場には猫がフンをするからと

金網がはりめぐらされ、金網デスマッチのような

なかで子どもたちはしゃがんで砂遊び。

 

将来をかんがえるのは

精神的なリスクを抱えながらも

生きるために必要であるが、

まちがった方向に進んでゆく、というところに

ブレーキがかけられない国も政府もひともいるかもしれない。

 

そして、二進も三進もゆかなくなって

ひとは思考停止に陥ったりする。

 

歴史がそれを語っている。

 

塾の教室にあがってゆくとき

エレベータのドアがあいた瞬間、

K女史が中から出てきた。

彼女は、わたしを見るや「おつかれさま」と言った。

優しく明るい声である。それもいっしゅんの出来事だった。

わたしは、つられて挨拶したが、はたしてだれだったか、

あとから、K女史だったことに気づいたくらいだ。

 

だから、教室にはいって、彼女がもどってきたので

わたしは褒めたのだ。

 

「君さ、認識能力はやいよね。一瞬でわたしを認めてさ、

あれって、霊長類研究所のサルのアイちゃんとおんなじくらいの

能力だよ」と。

 

と、彼女は言下にこう答えた。

「うれしくない」