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認知心理学と商法

 たとえば、ケーキ店、

常連客はなにももんだいないようですが、

じつは常連さんほど冒険をしないので、

新メニューに手がでないそうです。

これを「現状維持バイアス」といいます。

 

 現状維持バイアスとは、

二か月間無料です、なんていいながら、

二か月経って、どうされますか、とかいわれると、

うーん、じゃお願いするわ、

と多くの消費者は無料期間を終えても継続してしまう、

そういう心理状態のことです。わたしごとで恐縮ですが、

この期間無料でご提供いたします、とか言われると

「きみね、現状維持バイアスを使って商売しないでくださいね」と

いつも念を押しています。

 

ついでに、レーザーブレイド商法というものがあります。

ひげそりの本体は廉価なのですが、

その替え刃がやたら高いんですね。

ジレットシェーバーを使っていたら、

ジレットの替え刃がひつようです。五個入りで何千円もするんでよ。

 

 パソコンのプリンターもそうです。

本体はわりに安いのですが、

インクがバカ高いのです。

ウオーターサーバーもそれです。

サーバー代は無料レンタルです。

が、その瓶の水が高価なんです。

だから、わたしごとで恐縮ですが

「サーバー代は支払いますから、水を今後ただにしてくれますか」と

訊きかえします。だいたいのセールスマンは、

だめだこりゃ、となります。これがレーザーブレイド商法です。

 

 さて、はなしを変えまして、パティスリー・サロンでの

現状維持バイアスを克服するのにナッジ理論が使われます。

つまり、ケーキのサイズを小さくして

顧客に買いやすくさせるのです。

また、新規顧客にも、やすい商品の提供ですから、

そのケーキが買いやすくなります。これ買ってください、

なんて店側はなにも言っていないところが急所です。

 

ナッジ理論というのは、

こちら側から命令するでもなく、

視覚的に対象者の行動をうながす行動理論のことです。

まるで、対象者がみずから判断したように

しむけるアーキテクチャといってもいい。

トイレの朝顔におしっこをするところ、

あそこにシールのようなものが貼ってあります。

あれもナッジ理論です。

そこにおしっこをかけてください、とは

言っていないのですが、たいていのひとは

そこにめがけて放尿しますね。

 

 また、商法にはさまざまのバイアスがかかります。

あるいはバイアスをかけます。

たとえば「プライシング効果」。

おもいきり廉価で商品を提供、

大量生産や仕入れでコスト削減する、

ジャパネットやドン・キホーテなどの戦略です。

 

つぎは「ウィンザー効果」。だれかほかのひと、

第三者が、これいいよっていうとおもわず

信用してしまう心理状態、これを利用する戦略です。

これにはマーケティングが必要とされています。

テレビショッピングでとなりの女性が

「これいいですねぇ」なんて大根芝居をしたりしますが、

これもウィンザー効果の延長です。

この商品をご使用の〇〇さんは

「いやぁ、すっかり気持ちよくなりましたよ」

なんていうのもそれです。

 

つぎの認知バイアスとして

「アンカリング」があります。

最初にみた情報がどうしても脳裏からはなれずに、

それにひきずられてしまう心理状態のことです。

船のアンカー、錨ですね、ここからの命名です。

錨をおろすと船はそこからほとんど動けません。

それにちなんだ名前です。車を買おうとしている女性が、

まずは色を気にします。あ、この色素敵ね、

となると性能とか価格が二の次になってしまいます。

これがアンカリングバイアスです。

前の上司のほうがよかったよな、

なんていうのもアンカリングかもしれません。

 

そして、最後が「カリギュラ効果」。

するな、するなというとひとはあんがい、

それをしてみたくなります。見るなよ、見るなよ、

というとだいたい見ます。言わないでねって言われると、

だいたい言います。だから浦島太郎はお爺さんになってしまったんですね。

 

 認知心理学は、こういったバイアス、

効果が生活のなかにどれだけはいりこんできているかを

かんがえる領域なのです。