「ゾウ」という動物がいます。
ただ、単に「ゾウ」と発音すれば、
つまり記号表現です、
しかし、私たちは、おのず「象」という
あの大きな生き物を想像することができます。
この想像の世界を記号内容と呼んだのです。
ソシュール先生は、この記号表現を「シニフィアン」、
記号内容を「シニフィエ」と名付けました。
だから、コトバを語れば、
かならずシニフィエの領域が付随するということです。
専門家のあいだでは造語的に
「シニフィエ領域」という語で説明するひともいますが、
これは、その語の奥に潜んでいる意味合いのことです。
記号学では、このシニフィエを「含意」、
コノタシオンと呼んでいます。(記号表現はデノタシオンといいます)
もうすこしかんたんに話しますと、
コトバとは語ったものと同等の語らないものを含む、ということです。
「おじいちゃん、元気で長生きしてね」という
孫のやさしい一言の裏側には
「おじいちゃんは長生きしない生きものだ」
という恐ろしい言外の意味を含んでいるのです。
このあいだ街で「チャーシュー入りチャーハン」という看板をみつけました。
ということは、
この店は、通常はチャーハンにチャーシューを
入れていないということを宣言しているわけですね。
コノタシオンです。