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行くか、行かぬか

小学校のときに五人組というのがいた。

 ミズ・のりお・ター坊・ケイジロウ、そしてわたしである。

 だれが名付けたのか、たぶん大人か先生だろうが、
なぜそう呼ばれたのか、とにかく一括りにされていた。


 この五人はよく行動をともにした。

 探検とかいって、小川のような下水道を懐中電灯を片手に、
線路の下をくぐって洗足池のほうまで歩いていった。

 当時、懐中電灯という装置は、子ども心に火をつける
なにかを偶有していたとおもう。

 帰路、母親たちに、探検がばれ、
怒りの顔で道路からわたしたちを睨みつけ、
そのあと、こっぴどく叱られたものだ。

 たしか、あのときも、あの五人だったような。


 

 そのミズからひさしぶりに電話があった。


 「いまだいじょうぶ」

 「うん、どうした?」

 「きょう、鐘ならしに行ったんだよ」

 「あ、マザー上場だっておめでとう」

 「あ、うん、どうも、そうしたら、そこにイワサキがいたんだよ」

 「のりお?」

 「そうそう、かれね、東証で働いているんだって」

 「のりおって、小学校一年の内科検診でパンツまで脱いだやつだろ?」

 「知らねぇょ、そんなこと」

 「あ、そ。それで」

 「うん、ひさしぶりで会いたいんだって、
でさ、このへんに住んでるのは、お前とター坊くらいだろ」

 「ま、たしかに、ケイジロウはハワイだし」

 「で、いつなら空いてる?」

 「あ、ごめん、おれね、空いているの月曜日しかないんだよ」

 「そっか、わかった、じゃそれで調整してみるよ」

 電話はこんなようすだった。


 ミズは、ゴルフ関係の雑誌の社主で、
今年度からマザー上場の会社を育てた男である。
ゴルフ場もいくつか購入しているはずだ。

 のりおとは、中学以来、あっていないから
40年以上消息をしらなかった。しかし、東証の社員か‥。

ター坊は生保の社員としてぱりぱりである。



 うん、じゃ、おまえはどうなんだ、というじぶんの声。


 うーん、ちっぽけな会社の取締役という、
文字通りの名だけの存在。文字遠り・・・


 友がみなわれより・・・


という気持ちは拭えない。

 

 しかし、わざわざ、わたしに日程をあわせてくれるというので、
それを断るわけにもゆかない。


 それから数日たって、ミズからメールが来た。

 今度の月曜日、場所は銀座だそうだ。