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店主日記

筋をとおすやつ、というのと

めんどくさいやつ、というのと、

ほとんど類比的である。

 

筋を通せば窮屈である。とかく人の世は住みにくい

 

横浜の「木曽路」に行った。

と、店先で着物をきた店員さんが

「禁煙席でよろしかったでしょうか」

と、訊いてきた。

 

「はい?  わたしあなと初対面ですよね。

よろしかったでしょうか、はないでしょ。帰る」

 

と言って、玄関先からさっさと帰ったこともあった。

 

いやな客だろうね、たぶん。

 

でも、「よろしかったでしょうか」は

やめてもらいたい。

 

 それに、もうひとつ、

「ね」と「さ」もやめてもらいたい。

 

これも横浜の話。コンビ二で。

店主と名札にあった。

 

「356円ですねぇ」

 

なんだよ、この語尾の「ですねぇ」というのは。

 

「356です」でいいじゃん。

 

この「ねぇ」はなにが言いたいのだろうか。

親しみやすさ?  いや、そんなものいりません。

 

で、わたしは「箸ありますか」と、たずねたところ、

「ありますよ」と答える。

 

この語尾の「よ」はなんだよ。

 

「あります」で過不足なく語れているではないか。

 

ということで、それきり、わたしは

この店には二度と行っていない。

 

 

 

「す」ののびるひとがいる。

 

「おはようございますーーー」

と、「す」に余韻があるのだ。

愛想笑いの真顔にもどる時間くらい、

この「す」がかそけく延びている。

 

それがひどく気になるが、これは筋をとおす話とは

関係なかった。

 

「す」で笑うひともいる。

 

「す・す・す・す」と笑う。

これも関係なし。

 

 

 

ヤマダデンキという大きな電気屋さんが

自由が丘にある。

 

卓上のLEDの蛍光灯を買うためだ。

 

てごろな値段のがあったので、

「これください」って言ったら、

店員さん、「すこしおまちください」って、

なにやら、腰からリモコンのすこし大きいような器具をだして

ピッとかやりながら、「あ、これ在庫きらしてます」と

言った。

 

「じゃ、この色違いは?」

 

「は、すみません、これも切れてます」

 

「じゃ、これは」

 

「はい、すみません、ありません」

 

と、三色とも同型のLEDの蛍光灯はなかった。

 

「おい」

 

わたしは店員にむかってこう言った。

「なんで売れないもの店に並べてんだよ。

八百屋をみろよ、キュウリが置いてあって、

これくださいって言えば、売ってくれるよ。

売るから展示してるんだろよ。

ガキの使いできてるんじゃないから、

売れないものを展示するなよ」

と、すこし荒っぽく言ったら、

たぶん店員もそういうのには慣れっこなのだろう、

はい、はいって頭をさげるばかりである。

 

「ん。じゃ、こっちのはあるのかい」

と、定価3万円するほうを指呼して言った。

 

「は、はい、そちらはあります」

 

たしかに、その下にダンボールの箱がいくつか

置いてあり、在庫確認するまでもない。

 

「な。このまんま、これくださいってわけには

ゆかないよ」と、わたしは店員に言うと、

「しばらくお待ちください」と走るように

事務所のほうに戻っていった。

と、しばらくして、

「あの、これ5000円値引きさせてもらいます」

 

「あ、そう、じゃ、もらいます」

と、さっきまでの怒った大魔神のような顔が

いっきに、高田美和の涙で柔和にもどり、

そそくさと帰宅したものだ。

 

筋をとおしたのか、いやな客だったのか。

 

たぶん、いやな客なんだろうな。

 

 

 

インターネット会社の「ハロネット」という

ところと契約している。

ずいぶん大きい会社になったそうだ。

 

で、電話をたまにかけて

質問したり、お願いしたりしているわけだが、

交換の女性だろうか、ワンコールでかならず出てくれる。

 

社員教育がゆきとどいているのだろう。

 

しかし、担当の方をお願いすると、

きまって「どのようなご用件でしょうか」と

訊かれる。

 

さいしょのうちは、ていねいに「クーポンプラスの不具合で」

とか、もうしあげていたが、

毎回、毎回「どのようなご用件でしょうか」と訊かれると、

いささか、耳にたこ、いやになってきて、

それが耳障りになってきたのだ。

 

だから、このあいだも

「あなたにこの件をもうしあげて、

解決してくださるならもうしますが、

そうでないなら、わたしは、これをもういちど

担当者に話さなくてはならないわけで、

おなじことを二度言うくらいなら、

この電話をこのまま切らせていただきますが」

と、もうしあげた。ほんとよ。

 

と、「はい、それではお待ちください」と言って、

担当者につながったのだが、

なんだ、用件を言わなくてもつながるんじゃないか。

 

そもそも、インターネット関係の会社なんだから、

担当の方に、今飲んでいる薬の効能とか、

ヤクルトを今月から取っているが、その効果とか、

さいきん、めまいがひどくなっているが、

どうしたらいいか、とか、そんなこと

訊くわけないじゃないか、だろ。

 

それにしても、

これっていやな客なのだろう、たぶん。

 

 

つまりは、

筋をとおすやつと、

めんどくさいやつと、

それから

いやな顧客とは、

ほぼおんなじということだ。

 

住みにくいことこのうえもない。