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鮭のおにぎり

何十年かぶりで、セブンイレブンのおにぎりを買う。


 そもそも、おにぎりが苦手である。

 だれが、ソールフードと言ったのか。
ま、有間皇子も、草枕旅にしあれば椎の葉に盛る、なんて、
おにぎりっぽいものを食しているのだから、
ソールフードなのかもしれない。

 かもめ食堂のメインもおにぎりだったし。


 ただ、おにぎりは、いくつ食べても
満足感が得られない。みかんといっしょだ。

 もうひとつ、もうひとつ、と、どんどん食べてしまう。

 手づかみがいやだというのではない。

 道具をつかわずに食べられるという
手段は、かなり、効率がよい。

 ナンとか、タコスとか、ケンタッキーとか、
もちろん、おにぎりも、
手づかみはプリミティブな気がして、これはこれでよい。

 われわれのDNAに残された原始的なものを よびさます

「なにか」が手づかみにはあるんじゃないか、 とさえ、おもうのだ。

 ただ、コンビニのおにぎりはよくない。

 仄聞するところ、コンビニのおにぎりは、
48時間、外気に放置していても、大腸菌が発生しないという。


 自然の食品なら、一日も経たないうちに大腸菌は、
山ほど発生するらしい。

 なのに、なぜコンビニのおにぎりは、そうではないのか。

 あのつやつやしたごはんの粒のなかに、
大量の農薬くらいの薬品が入っているといううわさである。

 わたしは、それを聞いてから、コンビニのおにぎりを
買わなくなった。買わなくなって、おそらく30年は経つだろう。

 ヤマザキパンに勤めているひとが、ヤマザキのパンを
けっして買わないのと類比的である。


 が、このあいだ、ちょっと見たテレビで、
セブンイレブンの直火焼きの鮭のおにぎりを
やっていて、お、なんだい、ずいぶん手の込んだことを
してるじゃないかと、すっかり感心し、
うん、いちど、食べてみるか、と、重い腰をあげたのであった。


 で、今夕、その「直火焼き鮭」を買ってみた。

 棚にならんでいるさまざなおにぎりと違って、包装も豪華で、
他のものとの差異は歴然である。

 これには、ほかと違うのよ、というアウラが
コンビニの天井まで登りつめていた。


 いそいそと、さっそくおにぎり試食開始である。


 まず、三角の上の部分をやぶって海苔とごはんを
合体させる。これ、うまくできてるよね。
 海苔がパリパリだもの。

 と、このシールをおもいきり破ってみる。


 は?


え、どうしたの。



 なんと、ビニールとともに、海苔もいっしょに破れてしまった。

 はい?


わたしは、すこぶる哀しくなって、いや、
やぶれかぶれになって、この鮭のおにぎりを
くるんでいるビニールをびりびりに破いたのである。

 そうしたら、それとともに、海苔もびりびりに砕かれてしまったのだ。


 なんだい、これは。


 わたしはしかたなく、
この、2006年の新宿・渋谷エリートバラバラ事件の被害者のような
海苔をかき集め、丸はだかになった、
やや輝きをみせるごはんの塊にぺたぺたくっつけながら、
はんぶんやけくそで食べ始める。


 と、うーん、ご飯に塩気がない。

 そーか、鮭のうまさを引き出すための配慮なのか。

 しかし、量的に満足ゆくものではなかった。

 わたしには、おにぎりとの相性がよくなかったのか。

 など、おもいつつ、

 やはり、運転しながら、おにぎりを剥いてはいけないのだな、
ということにおもいは馳せたのだ。