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彼の答えのあとは書きません

 聞き違いってのも
はなはだしいのだが、
むかし、いっしょにPTA活動をしていたひとが、
コンビニのレジにいる。


 
「あら、どう元気?」

「はい、会長もお元気で」

「はいはい、そちらもお変わりなく?」


「え。お金がなくって?」

「ちげぇょ、お変わりなくって言ったんよ。
あ、もちろん金もないけれども、は、は、は」
と、わたしは笑ったのたのだが、
どうすんだよってくらいは、明日も明後日もそうだろう。


こまった、こまった。


昨日の夜は、練馬で授業だった。


環境の話である。J ・J ・ギブソンっていうひとの話。

このひとは、生態心理学の創始者で、
環境は有機体に「刺激」を与えるという概念をくつがえし、
環境によって実在する有機体が
その生活する環境を探索することによって
獲得することのできる意味や価値であると説いたひとである。

と、ま、ややこしいわな。

これをアフォーダンスというのだが、
そんなこと生徒さんに言っても右から左。


だから、手を換え、品をかえ、
余談に花を咲かせ、この場をしのぐのである。


「海で泳いでいるときさ、サメが来たとする、
さて、どんな方法で撃退するか、知ってるか?」


このクラスは、ノリがよく、上流から流れてきたもので、
ひとの生活を知った須佐能の尊だが、
なにが流れてきたか、という発問に「うんこ」と答えた
クラスである。


ほんととは、箸なのだが。


さて、サメの話。


これは、だれから訊いたかわすれたが、かなり
有効な手段らしい。

この解答は「乾電池」である。


乾電池を海に入れると放電がはじまり、
この電波がすこぶるサメを刺戟して、
サメは這う這うの体で逃げ帰るらしい。


乾電池というものは、相当な威力なのである。


で、わたしは、この答えをひっさげて、
端からずっと答えを聞いてみた。

ほとんどの生徒さんが「わからない」と
首を横に振る。

と、毎回遅刻して、毎回予習をせず、
ほとんど成績の上がらないY君が、
口火を切った。

わたしは、かれのこの答えを聞いて、
ほんど仕事をわすれて抱腹してしまったのである。


その答えはこうだった。


「死んだふりをする」